ぐるぐる日記

考え、書いて、のこす。

いつか世界中を旅するその日まで

曇り空の朝、いつものように珈琲を用意していると、突然大学時代の友人から「今、テレビ電話できる?笑」とLINEがきた。

ちょうど息子もご機嫌タイム。「できるよ〜」と送ってまもなく、スマホの画面に広大な大地が現れる。

ワーキングホリデーとして昨年からオーストラリアで暮らしている彼女。1年間の滞在を終え帰国するのを前に、オーストラリア中を旅しているのだそうだ。ちょうどエアーズロックで日の出を見た後に連絡をくれたらしく、急にごめんね、この美しすぎる景色を誰かと共有したくて、と笑う。

画面いっぱいに広がる青い空と赤茶色の大地。その明るいツートンカラーが日本ではない、どこか別の国の風景であることを物語っていた。風が強いのだろう、声と共にゴーーッという轟音や、鳥のさえずりも聞こえてくる。私の立つ静かな台所とは対照的のにぎやかな世界だった。

珈琲を淹れながら、数千キロ離れた遠い国の大地を感じる朝。数分前までこんな風に画面越しにエアーズロックを拝めるなんて思ってもいなかった。ちょっとしたサプライズに、1人愉快な気持ちになる。

何より、自分が感動した景色を私に見せようと思ってくれたことがうれしかった。

彼女とは学生時代にたくさん旅をした。東京、広島、台湾、イギリス。ふとしたときに楽しかったなあと思い出される旅の思い出が、それはそれはたくさんある。2人でよく「社会人になったら、世界中のいろいろな場所へ行くんだ」という話で盛り上がったっけ。あれから数年が経ち、私は結婚して子どもを産み、彼女はあの頃の夢そのままに世界各地へ足を運んでいる。

今の私には彼女のような暮らしはできない。でも、世界中を見て回りたいという思いは変わらず持っている。そんな私にとって、彼女は楽しいこと・好きなことを思い出させてくれるエネルギー源のような存在だ。

日々の忙しさの中、目の前のことで頭がいっぱいになったとき。彼女と話すと「そうだ私は世界中を見て回りたいんだった!」と思い出す。その度、元の自分に戻ったような気がしていた。

今すぐは旅に出れないけれど。その代わりに、今は彼女が世界中から仕入れる思い出話を心待ちにする。いつか自分で世界中を巡る日まで、彼女の土産話からパワーをもらい、楽しませてもらうつもりだ。

もうすぐ一時帰国をする彼女。パリ五輪を日本で観戦した後、また別の国へ行く予定なのだそう。それまでに会う約束もしている。

今度会ったときは一体どんな話をしてくれるだろう。今からとても楽しみだ。

2018年春、彼女と卒業旅行で訪れたロンドンにて。青空の中、建物の隙間から飛行機雲がスーッと伸びていた。